NCAAとは
NCAA(National Collegiate Athletic Association)=全米大学体育協会は、1906年に設立されたフットボール、バスケットボール、野球、サッカー、バレーボール、テニス、ソフトボールなど23種類の競技を統括している組織です。アメリカ国内には大学スポーツの統括組織としてNCAA以外に、NAIA(National Association of Intercollegiate Athletics)などがあります。

NCAAが発足したきっかけとは
NCAA(全米大学体育協会:National Collegiate Athletic Association)は、アメリカ合衆国における大学スポーツを統括する最大の組織です。その発足の経緯には、20世紀初頭のアメリカ社会におけるスポーツの急速な発展と、それに伴う安全性や公正性の問題が深く関わっています。19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカの大学ではフットボール(アメリカン・フットボール)が急速に普及しました。当時のフットボールは非常に過激で、ヘルメットなどの防具が未整備であったため、毎年多くの重傷者や死亡者が出ていました。特に1905年には、全国で18人の選手が試合中に死亡し、100人以上が重傷を負ったと報告され、世論の大きな批判を浴びました。
この事態を受けて、当時のアメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトが立ち上がりました。ルーズベルトは大学スポーツの重要性を認識していた一方で、安全性の確保が急務であると考えていました。彼はハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学などの代表者をホワイトハウスに招き、フットボールの改革を促しました。その結果、ルールの見直しと安全性向上に向けた取り組みが始まりました。

このような背景のもと、1906年に「Intercollegiate Athletic Association of the United States(IAAUS)」という新たな組織が設立されました。この組織が、後のNCAAの前身となります。IAAUSの設立目的は、大学間競技におけるルールの標準化、公正な競技運営、安全性の確保でした。発足当初の加盟校はわずか数十校でしたが、徐々にその影響力を拡大していきました。
1910年には、IAAUSは現在の名称である「National Collegiate Athletic Association(NCAA)」へと改称されます。この時期から、NCAAは単なる競技規則の管理団体から、選手の資格や学業成績、奨学金の管理など、より広範囲にわたるガバナンスを担うようになっていきます。また、20世紀中盤以降には、テレビ放映権やスポンサーシップなどの商業的要素も加わり、NCAAは巨大なスポーツビジネス組織へと変貌していきました。
このように、NCAAの発足は大学スポーツにおける安全性、公正性、規律の必要性から生まれました。その後100年以上にわたり、NCAAはアメリカの大学スポーツ文化を形作る中核的な存在となっています。現在では1000校以上が加盟し、ディビジョンI、II、IIIに分かれてさまざまな競技が行われており、大学スポーツは教育の一環として、また社会的・経済的にも大きな影響力を持つ存在として発展を続けています。
NCAAの競技種目について
NCAAは様々なスポーツ競技に関与していますが、特にアメリカで人気のある競技(フットボール、バスケットボール、野球、陸上競技など)に重点を置いています。NCAAでは年間を通じて多くの各競技毎にチャンピオンシップ大会を主催しています。これらの大会は、各競技で主にトーナメント形式で優勝チームを決定します。特に、NCAAバスケットボールトーナメント(通称:マーチ・マッドネス)やNCAAフットボールのボウルゲームは非常に人気があります。
主な競技種目は以下の通りです。
・フットボール
・バスケットボール
・野球
・ソフトボール
・サッカー
・ラクロス
・陸上競技
・水泳(飛込)
・水球
・テニス
・ゴルフ
・アイスホッケー
・フィールドホッケー
・レスリング
・クロスカントリー
・ボート
・フェンシング

NCAAの加盟大学とディビジョン(Division)について
NCAAに加盟している大学は全米で約1,200校存在しており、各競技の多くがディビジョンⅠ(DivisionⅠ)、ディビジョンⅡ(DivisionⅡ)、ディビジョンⅢ(DivisionⅢ)に区分けされ、各ディビジョン別に競技毎の奨学金の割り当て数も規定されています。ディビジョンの区分けは各大学の体育局(Athletic Department)の予算規模などで決まるため、必ずしも競技の実力を表しているものではなく、ディビジョン間で入替戦が行われることも無いというところが日本国内のシステムとは異なるところです。
各ディビジョンの特徴についてまとめましたのでご覧ください。
《ディビジョンI》
・最も競技レベルが高く、資金も豊富な大学が多い。
・フルスカラシップ(奨学金)を提供するプログラムがあり、スポーツの規模が大きい。
・NCAAトーナメント(特にバスケットボールのマーチマッドネス)が有名。
《ディビジョンII》
・中程度の競技レベルで、学業とのバランスを重視。
・奨学金は一部のみ提供され、全額支給は少ない。
・学生アスリートは、学業とスポーツの両立を目指す傾向が強い。
《ディビジョンIII》
・競技レベルは低めだが、学生アスリートにとって学業が最優先。
・スポーツに対する奨学金は存在せず、すべての活動はボランティアベース。
・大学生活の全体的な経験を重視し、部活動も幅広い。

NCAA加盟大学の体育局(Athletic Department)について
NCAAに加盟している各大学には、その大学で実施されている各競技を包括的に運営する体育局(Athletic Department)というものが存在しています。体育局では全体の予算面も掌握しており、その予算規模はディビジョンⅠの上位クラスの大学では年間100億円を超える規模となっています。体育局の役割については下記をご覧ください。
・プログラムの管理:
⇒各スポーツチームの運営、コーチの採用、トレーニングプログラムの設計などを行います。
・予算管理:
⇒スポーツプログラムの予算を策定し、資金の配分を管理します。スポンサーシップや寄付金の獲得も重要です。
・コンプライアンスの確保:
⇒NCAAの規則やガイドラインに従った運営を行い、選手のアマチュアリズムを維持します。
・選手のサポート:
⇒学業や健康管理、メンタルヘルスのサポートなど、選手の全体的な福祉に関わるプログラムを提供します。
・マーケティングとプロモーション:
⇒スポーツイベントのプロモーションやファンの獲得、メディアとの関係構築を行います。
・地域との関係構築:
⇒地域コミュニティとの連携を深め、大学のブランドやスポーツプログラムの認知度を向上させます。

NCAAのカンファレンスについて
NCAAの加盟大学は各ディビジョンに振り分けられ、更にその大学が存する地域をベースにカンファレンスに所属することになります。原則、その大学の全ての競技が一つの同じカンファレンスに所属しレギュラーシーズンを戦うことになります。NCAAのカンファレンスについては、こちらをご覧ください。

NCAAの各競技種目別シーズン一覧
NCAAの主要な競技種目の公式戦が行われているシーズンを画像で紹介しています。